洋食屋さとー

【閉店】

【電話番号】0265-78-5470
【営業時間】1100-1400, 1700-2200
【定休日】水曜日
【住所】長野県伊那市;入舟の信号から徒歩1分;R153沿い

2005/01/31

青龍』を締め出され、よっぽど他んとこへ河岸を変えるかと考えたが、せっかくの入舟だ。駐車場にも車を停めてしまったので散策する。しばらく連れと散歩をした後、ビーフシチューがうまいと聞いていた『さとー』へ。

店の入り口は国道沿いだとばかり思っていたが、その裏手にもあった。裏手の扉を開けると、ちょうど厨房側らしくデミグラスソースのいい香りが俺を包んで外に流れていく。たまんねーな。店内は喫茶店にバーの血統が入ったような装飾。居抜きか?まだ1年くらいの店の割には、妙に味わいあるもんな。このビル自体、随分と風格のある様相だが、ここは以前はなんの店だったんだ?わざとレトロチックにしたわけじゃあるまい。頭をかすめて流れているのはジャズ。最近の伊那じゃどこ行ってもジャズだな。流行ってんのか。どこもかしこもこればっかだ。奏者はMiles Davisかや?レストランにしちゃボリュームのある曲を使っている。古めかしいスピーカから放たれる音は小気味いい。

ひとりで来ているあんちゃん、老夫婦、スナックのママ、女学生グループとノージャンルな客層。そのほとんどは常連らしく、従業員と軽口を叩いている。和気あいあいとしているが、取り立てて騒がしいわけでもなく、しっとりとした空間が形成されている。根っから接客が好きなタイプがやるとこういう店になる。客も店員がテーブルにやって来るのを楽しみにするんだ。そして、店員も嬉しそうに皿を運んでいく。

メニューにはレストらーんな定番が羅列していて、オーソドクス。例の如くおすすめを訊ねると、「どれもおすすめです」と胸を張って返してくる。言うねぇー、そういうの大好きだよ。長野はこのノリができない奴多すぎ。いい歳した連中が、中高時代の奴らと付き合い保っていること自体、他県じゃありえまい。プライベイト・エリアっつーよか、カンパニー・バリアな。住み始めた当初は、かなりのカルチャー・ショックだったぜ。それはともかく、俺たちがオーダーしたのは、クアーズ、オレンジジュース、「うそつき豆腐」(310円)、「ビーフシチュー(M)」(1150円)、「ポルチーニのリゾット」(680円)。

「うそつき豆腐」ってのは、ぱっと見、やわらかプリン。最初に運ばれて来たときは、なんでデザートが (・△・?)と疑問符。豆乳でこしらえたものらしく、それを聞いてなかったらやっぱりプリン。いや、聞いてもプリン。豆乳プリンの方がネーミングしっくりくる。でも、ゼリーのような弾力。なにものだ?使用しているソースはもちカラメルではなく、だし醤油。この汁うまい。納豆についてくるだし醤油と同じ味がする(ほめてんだ)。連れも気に入っている様子。なんかお腹が冷えてしまったので、残りは連れに食べてもらう。

俺的メインのビーフシチューは家庭で出るようなものをイメージしていたのだが(野菜ゴロゴロ、お肉ころころ)、出てきたのは牛肉にデミグラスソースをかけたタイプ。皿が厚く大きい割にソース(?)が少量なため、すでにぬるい (´・ω・`) ミュー オーブンで皿を温めるくらい大した作業じゃない。お肉はやわらかいし、デミグラスソースもきっちり作っているようだ。まあ、好きな人は好きだろうなな味。俺は好かんがな。何日煮込もうが、どんなに技巧を尽くそうが、料理人の苦心を客が汲む必要はあるまい。他の意見が訊きたいところだ。

リゾットに関しては、まず米がやわらかすぎ。ふやけた米は大嫌いなんだよ。そもそもリゾットって、芯を残すんだら?ちと不安になったので、ネットで調べる。あっほぉれっ、ぽちっとな ヽ(゚∀゚)ノ →「基本的に芯を残すように調理する」(by リゾット - Wikipedia)。間違ってねーな。連れも学校でそう教わったって言ってるし。だが、この手法ひとつに固執するほどカチカチ頭じゃない。それは言葉の成長をも留めちまうからな。けどな、食べようとイメージ沸かしたのと異なるものが出されて、それがうまくなかったら誰もがいやだろう。連れはこのリゾットをコンソメ雑炊と呼んでいる。いや、リゾットはイタリア風雑炊なんだが、んまぁ的を得てる。でも、おいしいよーと言ってはいるが、チーズがあったらだの(物足りないらしい)、あっさりしていて年寄り向きだの(本人はフォローのつもりらしい)タレてやがる。先日、『La Storia』の濃厚なリゾットを喰ったばかりでその印象が強いせいもあるだろう(連れも濃い味好き)。

連れを見ていると、高村光太郎の「智恵子抄」を思い出す。

 智恵子は『さとー』のリゾットには芯がないという。
 ほんとのリゾットが食べたいと言ふ
 『La Storia』の芯の残ったとろみあるリゾットが
 知恵子のほんとのリゾットだと言ふ
 あどけないリゾットの話である。

たしか、こんな感じだよな (・△・?)マチガイネー

総括すると、俺にはどれもとぼけた味に感じてならないが、『ぱいぷのけむり』といった老舗レストラン系の味やら保守的な味を求める連中には好まれそうだ。「とぼけた」って形容は、「調和」だの「ハーモニー」だのに言換できるしな。どっちにせよ、俺好みじゃない。接客については、お客を個人として扱ってくれる。これは接客業が好きじゃなきゃできんのだよ。シェフの笑顔もとても素敵だった。

こんだけ文句タレてるお前が保守的だろ!っつわれても、都合の悪いことは聞こえませぬ。桜ん坊、強引マイウェイ。ダマって付いてくりゃ、知らない世界に連れて行ってやんよ。

※ 『さと~』とスペルのだが、便宜上『さとー』と表現する。


◆ 写真 ◆



『さとー』店外


『さとー』店外


『さとー』店外


『さとー』店内


「うそつき豆腐」


「ビーフシチュー(M)」


「ポルチーニのリゾット」