2005/10/15
女は黙してオーダーを取り、俺たちのオーダーに対して一切の頷きもない。俺は不安になって再度注文をし直すが、じっとこちらを睨むだけで意思の疎通がままならない。めるの注文に対してもまったく同じ状態だ。俺はこの注文状況を把握できず、もう一度お願いをした。すると、表情を変えない女はなにも言わずに、うんざりとした視線を俺に投げ付ける。それから自室のドアを後ろ手で閉めるようにさっと振り返ると、小声で厨房にオーダーを伝え、レジの傍に佇む。安産型マネキン人形。
俺はひとりたじろいでいる。ひどく切なく、いやな気分だ。
おそらく注文できたであろうものがやってくるまで、厨房を見つめ、給仕に耳をすます。その間、女は終始一貫した冷血さを保ち他の客をもあしらっていた。注文時に聞こえるのは客のオーダーする声ばかり。どうやら、俺たちが特別扱いされているわけではないようだ。
厨房の覇気のないふたりのスタッフ(客と無駄話するときはむやみに元気だったが)にしても、この女にしても随分と若い。彼らは軌道修正してくれる統率者不在の状態で、なにも気付かずに増長し続けるのか。
もともと他に行くあてがあったのだが、たまたまここを通ったために、これがあの有名店かとめるを誘ってしまった。接客の噂を多少耳にしていたにもかかわらず、わざわざ東京から遊びに来てくれためるにこんな思いをさせてしまったことを詫びなくてはならない。
まじ、すまない。
こういう店が早く撤退し、伊勢町通りに少しでも品位が戻ってくれることを祈ろう。
関連リンク:
らぅめん助屋 信州伊那店(伊那市)