2007/12/31
年末年始を草津で過ごすため、
高遠からは和田峠を経由して軽井沢 → 草津というルートを選んだ。
まあ、これが一般的だろう。
『黒耀』はその和田峠を越えて幾らかした所にある蕎麦屋。
立派な建物である。
入店するとほぼ満席だが、
混雑した様子はなく、
音楽やテレビのないせいか店内はしんとしている。
高い天井と外の吹雪にすべての音が吸い込まれているのか。
混じり気のない内装は悪くない。
店の女は何度かレジで突っ立っている俺たちの前を通り過ぎるが、
挨拶をしてもなんのアクションもなく、
仕方ないので、厨房に顔を出して奥の空いた席に座っていいか訊ねた。
席に着いたもののそこにメニューはなく、
水も茶も来ず、かと言ってセルフというわけでもない。
俺の前に入店した組には茶を持って注文を取りに来ていたので
次は俺らかなと、暫く待ち、
それから随分と長い間待ってみた。
さて、なにも来ない。
雪降る窓際の席で嫁が寒さに耐え兼ねた様子を見せ始めたところで、
店を出ることにした。
周りの客は帰り支度をする様をじろじろ見ていたが、
それは吃驚というより、寧ろ羨望の視線だった。
どうやら注文してからも待たされている様子。
そこまでして喰うこともあるまい。
蕎麦屋で待たされることには慣れているが、
それは注文後に待たされるのであって、
ここまで路傍の犬の糞のように疎漏な扱いを受けたことがない。
大晦日に胸糞わりぃ。
思いつきで蕎麦屋に入るのは剣呑だな。
本来、寿司と蕎麦はひょこっと入って、ちょいと摘んで、さっと出る、が粋だと思っているが、そういう時代じゃない。それが適うのは、廻る寿司と立ち喰い蕎麦だけか。
※ 店名は黒曜ではなく『黒耀』。この辺りは黒曜石の有名な産地。